1 東京地裁「倒産部」に(2022年4月
東京地裁では、2022年3月まで、長年にわたり、破産・民事 再生は民事20部(破産再生部)、会社2 ビジネス・コート(2022年10月)更生は民事8部(商事 部)によって事件処理がなされてきましたが、同年 4月より、会 社更生、特別清算及び外国倒産処理手続承認援助事件等 が民事8部から民事20部に移管され、民事20部の名称も「破 産再生部」から「倒産部」に変更1 されました2。
民事再生と会社更生はともに再建型の倒産手続であり、手 続が類似しているところもあることから、会社更生が民事20部 に移管されたことに伴い、従前の会社更生の実務運用が変わ ることも考えられるものの、民事20部としては、当面は民事8部 の運用を承継しつつ、破産・再生事件の運用状況も踏まえ て、利用者が利用しやすい、公正・適正性を担保した円滑な 手続運用を継続的に検討していく3 、とされていることから、当 面は運用が大きく変わることはないと思われます。
連載の4回目(最後)の今回は近時の会社更生の動向等を 紹介したいと思います1 。
1 近年の会社更生の利用状況
会社更生手続は、裁判所により選任される管財人の下、会社 の事業再建を図る手続です。旧会社更生法は1952年に制定 され、その後、1967年、2002年等の改正を経て、現在の会社更 生法に至っています
かつては、会社更生は大会社向けの重厚な手続、民事再生 は中小企業向けの簡易時速な手続、といった切り分けのイメー ジもありましたが、負債総額1兆円を超える案件(リーマンブラ ザーズ日本法人やタカタ等)でも民事再生が活用されることがある一方、小規模会社の会社更生の申立の割合が増加してい る2 ことなどからすると、かつての会社更生=大会社、民事再生 =中小企業 というイメージは当てはまらなくなっており、事案 に適した手続選択がなされています。
会社更生は、長年にわたって、窮境に陥った株式会社の事 業再生に活用されてきましたが、下表のとおり、この10年弱の 間、利用件数が低迷しており、特に平成25年以降は実質的な 案件数で5件以内(全国)という状況が続いています
8月号(民事再生)、9月号(破産)と法的手続の話が続きまし たが、3回目の今月号は、近時の私的整理(協議会手続・事業 再生ADR)の動向を紹介したいと思います。
1 協議会の再生手続の利用状況
8月号に続いて、コロナ禍での法的倒産案件数の動向を紹 介します。今回は破産編です。
1 破産手続の利用状況
(1) 2020年
2020年に裁判所が受け付けた破産事件の数は全国で 78,104件(2019年比2 .6%減)、東京(本庁)で8,807件(2019 年比8 .0%減)となっています。東京の8,807件の内訳は法人 破産1,438件、個人破産7,369件であり、いずれも2019年比で 減少となりました1 。東京地裁(本庁)の2016年から2019年の破 産事件数は年間9,000件台中盤から後半で推移していました ので、2020年の8,807件は大きな減少といえます。減少の要因 としては、コロナ禍による影響緩和のための各種公的給付や 金融機関による資金繰り支援の浸透等が考えられます。
(2) 2021年1月から8月の動向(速報値)
1 はじめに
産業競争力強化法等の一部を改正する法案が2021年6月9 日に可決成立し、同月16日に公布され一部は公布日に、その 他の部分についても8月2日付で施行されました。
バーチャルオンリー株主総会をはじめとして、多岐にわたる 今回の産業競争力強化法等の改正ですが、本稿では、事業 再生と債権管理に影響のありうる改正点(「債権譲渡の第三 者対抗要件の特例」及び「事業再生の円滑化のための事業 再生ADRに関連する改正」)にフォーカスして説明いたします。 なお、本稿では、ことわりのない限り、改正後の産業競争力強 化法を「法」と略しています。
2 債権譲渡の第三者対抗要件の特例
これまで債権譲渡の第三者対抗要件の具備には、①公証 役場での確定日付の取得や内容証明郵便(民法467条、民 法施行法5条1項2号及び6号)、あるいは②債権譲渡特例法 に基づく債権譲渡登記(債権譲渡特例法4条1項、14条1項) のいずれかの方法による必要があり、実務的には①のうちの 内容証明郵便(電子内容証明を含む)の方法が多く用いられ ています。
1 はじめに
新型コロナウイルスの感染拡大が本格化した2020年4月頃 は、メディアなどで、2020年は企業の倒産件数が大幅に増加 するのではないか、という予測が少なからず見受けられました。 もっとも、実際には、企業の倒産、特に民事再生は大きく減少 しました。2020年の倒産動向については民間信用情報機関 等で発表1 されていますが、法的倒産案件の具体的な件数に 触れたものはあまりみかけないように思いますので、何回かに 分けて紹介したく考えています。今回は民事再生編です。
2 民事再生の利用状況
民事再生には、①主に企業の事業再生に活用される「通常 再生」、及び②個人のみが利用可能な「個人再生」の2種類が あります。この2つの手続のこれまでの利用状況は以下のとお りです2 。
3 企業の民事再生(通常再生)
1 はじめに
日本では高齢化社会を迎え、経営者の高齢化が進む中で、中小企業の円滑な事業承継が喫緊の課題となっています。とりわけ、2020年2月以降のコロナ禍による業績悪化や過剰債務も重なり、事業承継を検討している中小企業の経営者やその関係者は少なくないものと思われます。
本稿では、中小企業が事業承継や事業再生・廃業を行う局面において、「経営者保証ガイドライン」が果たす役割・機能等について、実務上の留意点を踏まえて最新動向を解説します。
2 経営者保証ガイドラインの策定
中小企業では経営への規律付けや信用補完のために経営者保証がされることがあります。もっとも、この経営者保証について、中小企業の円滑な事業承継や、経営が行き詰った際に早期の事業再生や経営者の再チャレンジを阻害するなど様々な課題が指摘されていました。